ChatGPTは営業の仕事にも使えるらしい。そう聞いて興味はあるけれど、具体的に何から手をつければいいのか分からない。そんな声をよく聞きます。実際に触ってみたいけれど、お客様の名前や商談の中身をうっかり入力してしまって大丈夫なのか、少し不安もある。その気持ち、正直よく分かります。
この記事では、営業の実務でそのまま使える5つの活用術と、コピーして貼るだけで試せる指示文(プロンプト)を用意しました。あわせて、貼る前に必ず確認しておきたい「入れてはいけない情報」も活用術ごとにセットで。ただのプロンプト集で終わらせるつもりはありません。
使う前に押さえる1つの原則──「そのまま貼っていい情報」と「ダメな情報」
5つの活用術に入る前に、まず一つだけ原則を共有させてください。難しい話ではありません。
実名・実数字は伏せてから貼る。役割やトーンの指示はそのまま貼ってOK。この一線さえ守れば、たいていの場面は乗り切れます。
たとえば「A社の〇〇部長へ」はNGですが、「取引先の総務担当者へ」ならOK。「見積560万円」はNGでも、「〇〇円(仮の金額)」なら問題ありません。ChatGPTに渡したいのは、あくまで「役割」「トーン」「構成」といった型の部分。固有名詞や具体的な数字は、置き換えてから渡す癖をつけておきましょう。
このあたりの詳しい理由や、社内で共有すべき入力NGリストは生成AIの社内ルールの作り方にまとめました。無料プランとビジネス向けプランで学習利用の扱いが違う点も、そちらで整理済み。ここでは重複を避けます。
現場でありがちなのは、商談の議事録をそのままコピペしてしまうケースです。急いでいるときほど、伏せ字にする一手間を省略しがち。似たようなヒヤリとする場面を、私も何度か見かけてきました。

営業がすぐ使える5つの活用術
ここからが本題です。5つとも、コピーしてChatGPTに貼るだけで試せる指示文つき。場面ごとに、貼ってはいけない情報も併記しています。

1. 初回アポ打診メールの下書き
新規開拓の一件目メールほど、時間がかかるものはありません。毎回ゼロから書いていたら、一日が終わってしまいます。
あなたはBtoB営業担当です。以下の条件で初回アポイントの打診メールを3パターン作成してください。
【商材】〇〇(△△業向けの業務効率化ツール)
【送り先】〇〇業の担当者(役職イメージ:総務・管理部門)
【目的】15分程度のオンライン商談の日程調整
【トーン】丁寧だが売り込み感を抑えたトーン
【文字数】300字程度
実際の会社名・担当者名は入れず、「〇〇様」のように空欄の状態で作成してください。
貼ってはいけないのは、送付先の実際の社名・担当者名・メールアドレス。そもそもこの場面では入力する必要がない、と気づくこと自体が第一歩です。3パターン出させれば、社内でトーン違いを比較できます。ゼロから書くより、着手までのスピードが段違い。
2. 商談議事録の要約とToDo抽出
商談直後、文字起こしやメモが長くて整理に時間がかかる。この場面でこそChatGPTが効いてきます。
以下は商談メモです。①決定事項 ②宿題事項(誰が・いつまでに)③次回アクション の3項目に分けて、300字程度で要約してください。
【商談メモ】
(ここに貼り付け)
ここが今回いちばんの注意点です。商談メモには顧客名・金額・契約条件など、機微な情報が集中しやすい。貼る前に「A社」「B様」「〇〇円」のように、仮名・仮数字へ置き換える一手間だけは省略しないでください。生成AIの社内ルールの作り方の入力NGリストに、まさに直結する場面です。
「毎回この置き換えが面倒」と感じた方もいるはず。その感覚、正しいと思います。記事の後半で別の選択肢もご紹介します。
3. 提案書のたたき台(骨子)作成
ゼロから構成を考える工程が、実は一番時間を食います。骨子だけでも先に形にできれば、随分と楽になります。
〇〇業の中小企業向けに、△△(課題)を解決する提案書の骨子を作ってください。
【現状の課題】【提案内容】【導入によるメリット】【導入ステップ】【想定コスト感】
の5つの見出しで、各見出しに3行程度の要点をまとめてください。
実際の顧客名・金額は入れず、後から差し込むプレースホルダー(〇〇)にしてください。
貼ってはいけないのは、自社の原価や粗利率など、社外に出せば競合に手の内を明かす数字。骨子だけを先に作らせて、肉付けは自分で行う。丸ごと任せないほうが、結局は質が安定します。
4. 競合情報の整理
複数社を比較検討している顧客向けに、自社の立ち位置を整理したい場面です。
以下は競合A社・B社について自分で調べた特徴のメモです(社名は伏せてあります)。
「強み」「弱み」「価格帯」の3軸で比較表にまとめ、自社の〇〇と差別化できるポイントを3つ提案してください。
【メモ】
(ここに貼り付け)
ここは他の4つと少し性質が違います。NDA(秘密保持契約)経由で知った情報や、取引先から漏れ聞いた未公開情報は貼らないこと。公開情報と自分の所感メモの範囲にとどめてください。情報漏えいだけでなく、他社の信用を傷つけることにもつながりかねません。
5. 既存顧客へのフォローアップの切り口出し
継続いただいているお客様への追加提案、御用聞きの一言をどう切り出すか。案外、悩むところです。
半年前に契約いただいたお客様(業種:〇〇、導入商品:△△)に、
追加提案のきっかけを作るフォローアップメールの切り口を5つ提案してください。
押し売り感のない、御用聞き的なトーンでお願いします。
実際の契約金額や契約内容の詳細まで書く必要はありません。「業種」「導入商品の種類」くらいまで抽象化すれば、それで十分に使える指示。切り口の引き出しが増え、毎回同じ文面になりがちなフォローアップに変化をつけられるはずです。
それでも不安な情報は、ローカルLLMという選択肢
5つとも、貼る前に伏せ字にする一手間さえ守れば十分に使えます。とはいえ、その一手間自体を毎回やるのが面倒だ、という方もいるでしょう。
そこで選択肢になるのが、ローカルLLMです。自社のパソコンの中だけで動くAIのことで、実名や実数字を含んだ議事録も、そのまま貼って扱えます。
誤解しないでほしいのですが、「ChatGPTが劣っている」という話ではありません。扱う情報の機密度によって、道具を使い分ければいいだけの話。この考え方はローカルLLM入門でも整理しています。
余談ですが、ChatGPT自体にも「一時チャット」という、履歴に残らないモードが用意されています。OpenAIのヘルプセンターによれば、一時チャットのままである限りモデルの改善には使用されず、保存しなければ履歴にも表示されません。ただし安全確保のため、コピーを最長30日間保持する場合があるとのこと(OpenAIヘルプセンター「一時チャット FAQ」・本記事執筆時点の2026年9月に確認)。伏せ字の手間をなくす代わりにはなりませんが、知っておいて損はない機能です。仕様は変更される可能性があるので、詳しくはOpenAI公式サイトで最新情報をご確認ください。
同じ議事録要約やメール下書きの作業を、ローカルLLMでそのままやりたい方はLM Studio実務活用に具体的なプロンプト例をまとめています。
まとめ:要点+次の行動の提案
要点を整理します。
- ChatGPTは営業の下書き作成において、頼りになる武器になります
- 貼る前に「実名・実数字を伏せる」一手間だけは省略しないこと
- その一手間自体が面倒に感じるなら、ローカルLLMという選択肢もあります
まずは今日の商談メモを1件、仮名に置き換えてから、2番目のプロンプトで要約させてみてください。それだけで、この記事の内容が一気に自分ごとになるはずです。
「営業部門でAI活用を広めたいけれど、社内ルールがまだ決まっていない」という方は、私にご相談ください。IT業務歴30年、インフラ構築からAI活用まで一人でこなしてきました。神奈川・東京・山梨を中心に、社内ルールの整備からローカルLLM導入までお手伝いしています。
もっと詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
- 生成AIの社内ルールの作り方 — 入力NGリストと社内ルールの作り方
- ローカルLLM入門 — 機密情報を扱いたい場合の入口
- LM Studio実務活用 — ローカルLLMでの議事録要約・メール下書きの実例
参考資料
- OpenAIヘルプセンター「一時チャット FAQ」(本記事執筆時点の2026年9月に内容を確認)



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